数年前の春、生まれてはじめて桜が大嫌いになったことがあった。まぶしいほど見事に咲き乱れる桜の全てが、どうしようもなく嫌だった。人々が花ごときに騒いでいることが無性に腹立たしく、満開の桜の下で飲んで食べて笑って楽しいときを過ごす人々を見ると、目を逸らしたくなった。そして何よりも、そんな風に全てをひねくれた目で見ている自分が嫌になり、喜びの季節は惨めに過ぎていった。
その翌年。桜の時期が近づくと、ああ、今年もまた罪のない桜ちゃんを嫌わなければならないのかなぁ、と、膨らんだつぼみを横目で見ながら、なんとなく気が重くなった。
数日後、前年に負けじと桜は見事に開花し、街は淡いピンク色で包まれた。心配とは裏腹に、桜を嫌う気持ちはすっかりどこかへ消えていた。皆と同じく満開の桜を心から楽しみ、前年一度も参加しなかった花見にも2回参加することができた。
怒りや悲しみが人に与える影響は想像以上に大きい。「負」の感情によって、美しいものは醜く、明るいものは暗く、楽しいことはつまらないことへと一変してしまうことがあるのだと、身をもって知った。
今年もまたこの季節が来た。桜ちゃん、今年は仲良くできるかな?
外へ外へと噴出す思いと、内に内にと縮こまる思い。
この二つが同じくらいの勢いでぶつかり合う時、行き場のない感情が膨れ上がって心が破けそうになる。
「ハートブレイク」
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