ドキュメンタリー映画『
ダーウィンの悪夢』を観た。タンザニアのヴィクトリア湖にナイルパーチという外来魚が放流されたことを皮切りに起こる数々の社会問題を描いている。白身のフィレが食用としてヨーロッパをはじめとする先進国で売れることから、ナイルパーチ漁業はその地域の一大産業に成長する。だがその裏には、貧困、飢餓、暴力、売春、エイズ、武器の密輸入といった深刻な問題が隠されていた。この映画で映し出される貧困から逃れることのできない人々の生活は想像を絶するものだ。
中学の教員をしている母が、家庭環境の不安定な生徒が最近あまりにも多いと嘆いている。両親が離婚している生徒が多いのは言うまでもないが、両親も親戚もおらず小学生の妹を姉と二人で世話する生徒や、親の都合で毎週平日に神奈川と静岡を往復する生徒、そして高校を受験しに行くのに電車賃がない生徒―そんな生徒が何人もいるというのだ。昔から家庭で問題のある生徒はもちろんいたが、30数年教師をしてきてこんなにひどい状態だったことはないそうだ。
両親の愛情の中で育ち、生活に困ることなく、温かい家庭があるのが当たり前だった自分は本当に恵まれていると、今更ながら思う。高校で留学をさせてもらい、大学まで教育を受けさせてもらった。大きな病気や怪我をすることもなく、家族皆仲良く健康で生きてこれた。
恵まれた者は、その恵まれた環境を何らかの形で社会に還元することができる。これまで、自分と社会は別物と感じ、二者をつなげて考えることができなかった。取るに足りない些細なことで一喜一憂し、いつも自分のことで頭がいっぱいだった。
社会と自分の間の隔たりは、恵まれた環境にありながら、社会とのつながりを築く努力を怠ってきた自らの傲慢さなのかもしれない。
※『ダーウィンの悪夢』は渋谷
シネマライズで2月9日まで上映中。